こんにちは。山口です。11月18日よりアレハンドロ・ホドロフスキーの新作映画『エンドレス・ポエトリー』が劇場公開されました。南米特有の文学手法である「マジックリアリズム」を取り入れ、生きることの意味を芸術的に表現しています。すでに、カンヌ映画祭でワールドプレミア上映され、各メディアから「ホドロフスキーの最高傑作」と絶賛されています。


(C) 2016 SATORI FILMS, LE SOLEIL FILMS Y LE PACTE

 

 ホドロフスキーと言えば、1970年に製作した伝説の映画『エル・トポ』が有名ですが、88歳になった今でも、積極的に映画を撮っています。現に、『エル・トポ』から23年ぶりに『リアリティのダンス』を撮り、『エンドレス・ポエトリー』が続編として、今後も5部作まで撮り続けていくそうです。

 それでは、作品のあらすじや感想をお伝えしていきますね。

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あらすじ:


(C) 2016 SATORI FILMS, LE SOLEIL FILMS Y LE PACTE
 生まれ故郷であるチリのトコピージャから首都サンティアゴにたどり着いたホドロフスキー家3人。厳格な父とオペラ口調でしか話すことの出来ない豊満な母。そしてひ弱でセンシティブなアレハンドロ少年。

 1920〜30年代のアメリカ大恐慌の影響を受けたチリはまさに乱世。 特にホドロフスキー一家が住む労働者街のサンティアゴは、ドラッグ漬けのジャンキーと奇抜な衣装でしか自己表現できないゴロツキ、同性愛者、娼婦、挙げ句の果てには内臓をさらけ出して息絶える酔っ払いなどヘドロのような街で生活をしていた。しかし、チリはパブロネルーダを始め、世界的な芸術的詩人を輩出した国でもあり、アレハンドロは退廃した生活の中にも、詩という一縷の希望を持っていた。しかし、厳格な父は、子が医者になることしか望んでいなく、かつ、強い男を強要する。そんな父と子の間には、軋轢が生まれる。 決死の覚悟で両親と別れ、詩人になることを決意したアレハンドロ。詩人として奇妙な生活が待っていた。


(C) 2016 SATORI FILMS, LE SOLEIL FILMS Y LE PACTE

 赤髪の豊満な熟女との耽美な生活と幻想的な詩作の日々。従兄弟の自殺。フリークスとのセックスと友人の裏切り。。。詩と芸術を理解してくれる仲間たちとの生活は濃密で楽しい日々だった。

 そんなある日、両親が現れ、「住んでいた家が火事になった」と悲観に暮れるのを 目の前にするアレハンドロだったが・・・・・。

映画の感想:


(C) 2016 SATORI FILMS, LE SOLEIL FILMS Y LE PACTE

 寺山修司はすでにおらず、鈴木清順もいなくなってしまった。かといって、デビッドリンチはちょっと違う。勝手で申し訳ないが、マジックリアリズムの古今東西の映画監督を3人挙げろと言われたら、この2人の日本人監督と、アレハンドロ・ホドロフスキーだと思っていた。鈴木清順が2017年に死去してしまい、とうとうホドロフスキーだけかと思っていた。しかし、このお方、88歳でも現役バリバリ、映画製作を精力的に行っているらしい。
 しかも、次回作は、メキシコで製作するらしい。なんとも、楽しみだ。
マジックリアリズムとは、南米特有の魔術的な表現手法だという。しかし、私なりに解釈するとマジックリアリズムとは、「まどろみ」と「血縁」が感じられる文学や映画だと思っている。生きているのか死んでいるのかわからなく、寝ているのか起きているのか、わからない。だけど、息を飲むようなリアリティが感じられる。南米のルーツとも言える、黒人と白人のあいだ、クレオール文化が影響しているのかもしれない。
 小説ならフォアン・ルルフォの『ペドロ・パラモ』とガルシア・マルケスの『百年の孤独』が代表作だが、読んでいて、結構難しい。だから、まずは、この映画で「マジックリアリズム」はどんなものか感じてみるのもいいかもしれない。
 「血縁」がどうしてマジックリアリズムと関係があるのか? それは、南米の映画や小説にはフリークスが良く登場するからではないだろうか!特にホドロフスキーの映画にはフリークスが良く登場する。どうしてかと思ったら、「これは究極の愛の形を伝えたかったのかも」とこの映画を観て、思うようになった。そうでなければ、劇中で、アレハンドロがあんなにやさしくフリークスを抱くはずはない。まるで、自分の子供を愛撫するように小人女を抱くのである。この場面だけで、もう無条件の愛というのがひしひしと伝わって来る。

「エル・トポ」を超えたか?

 ところで、「マジックリアリズム」の映画なら間違い無くホドロフスキーの『エル・トポ』が最高峰だと思っている。
『ホーリーマウンテン』もなにやら謎めいたカルト映画だが、『エル・トポ』の監督と期待したら、前作を超えることはなかった。
 もちろん、めちゃくちゃに面白いのだが。。。
 2013年に『リアリティのダンス』というホドロフスキーの新作が公開されていた。「ホドロフスキーって、まだ生きていたんだ」という驚きと、なんと、来日まで果たしたのだ。それで、ホドロフスキーの謎めいた人物像が実はチャーミングなおじさんとわかったことで、調子抜けしてしまったのだが。(もちろん、素晴らしい人物とわかって良かったが、もっと怪しい人物だと思っていたので)。そして、『リアリティのダンス』を観て、「あぁ、やっぱり『エル・トポ』を超えることはないんだ」と思い、自分を納得させるのに一苦労した。
 ところが、ここにきて奇跡が起こった。『エル・トポ』のような衝撃的な映像こそは多くはないが、荒々しさは洗練されてなおかつより上品なマジックリアリズムを感じる映画になっているではないか!
 『エル・トポ』は、絵画展を例にとるならば、無名の名作が何百枚も無造作に飾られている部屋にいるようだった。圧倒されるが少々重い。抵抗力のない人が見たら、「グロイね」で終わってしまう可能性だってなきにしもあらずだ。
しかし、『エンドレス・ポエトリー』は、まぁ無名の名作であることに変わりはないのだけど、その名作絵画が鑑賞者の気持ちを汲んで、きちっと計算して飾られているのである。鑑賞者にやさしいのだ。一つ一つの絵は衝撃的なのだけど、この素晴らしいキュレータにより、最後まで気持ち良く鑑賞できる。
 そう、色々と衝撃的なシーンはあるのだけど、なぜかプリミティブで清々しくて最後には「生きることに条件はない。生きていることを喜べ」と言われているような気になるのだった。

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監督 アレハンドロ・ホドロフスキーについて:

1929年チリ生まれ。12歳で首都サンティアゴに移住し、サンティアゴ大学で心理学と哲学を学んだが、マルセル・カルネの「天井桟敷の人々」に感動し、パントマイムにのめり込み大学を中退。1953年に渡仏し放浪生活を送る中でパントマイムアーティストのマルセル・マルソーと出会い「The Mask」、「The Cage]を共作し、後にメキシコに渡り100以上の芝居を演出する。戯曲を書きながら実験映画を撮った作品は ジャンコクトーに絶賛されるまでに至った。 そして、1970年、カルト映画で最も重要な一本と評される「エルトポ」を製作、1973年に「ホーリーマウンテン」を製作した。共に、 アメリカのミニシアターのレイトショーで記録的なヒットを出した。 2014年に23年ぶりの新作「リアリティのダンス」が公開され、2017年に続編「エンドレスポエトリー」が公開された。

「エル・トポ」とは:

それまでの映画表現を覆した伝説のカルト映画と評されている。圧倒的な映像美と問答無用の超絶ストーリーは、観る者の心臓を抉り、わしづかみにし、陶酔の世界に誘う。
 フェデリコ・フェリーニが撮ったマカロニウエスタン、黒澤明が撮った宗教映画と称されるほど、最高の振り幅と芸術性でマニアから崇拝されている。ジョン・レノンがこの映画を見て、45万ドルで買い取ったという逸話もある。

映画の公式HPは、こちら

◆公開日:2017年11月18日(土)新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町、渋谷アップリンクほか全国順次公開

◆クレジット
(2016年/フランス、チリ、日本/128分/スペイン語/1:1.85/5.1ch/DCP)
監督・脚本:アレハンドロ・ホドロフスキー
撮影: クリストファー・ドイル
出演:アダン・ホドロフスキー、パメラ・フローレス、ブロンティス・ホドロフスキー、レアンドロ・ターブ、イェレミアス・ハースコヴィッツ ほか
配給・宣伝:アップリンク

劇場:現在、公開予定も含め、全国50近くの劇場で公開されています。詳しくは、こちら

DVD化について:

配給元はDVDの製作も行っているアップリンクなのでおそらくDVDにはなると思います。大体、1年後くらいでしょうか。それまで待つなんて馬鹿らしいです。それに、兎にも角にも、やはり大きなスクリーンでお金を払って劇場で見ることをお勧めします。

最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。

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